「こいすちょう」と「しのぶれど」

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映画「ちはやふる -結び-」でも出てくる、百人一首の和歌2つ。
(あの場面も名シーンだと、個人的には思います)

「こいすちょう(恋すてふ)」と「しのぶれど(忍ぶれど)」の歌です。

いまから1000年以上前、同じタイミングで歌われたものになります。

ネタバレの範疇には入らないと思いますが、映画で初めて知るほうが感動が高まるかもしれません。

ですから、まだ「ちはやふる -結び-」をご覧になっていない方は、一応ご注意ください。
(感動を少しでも高めたいという方は、ご覧にならないほうがいいかと)

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こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか
漢字入り 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
意味・現代語訳 恋をしていると、私の名前がもう噂に出てしまっている。誰にもわからないように思いはじめていただけなのに。
歌い手 壬生忠見(みぶのただみ)
しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
漢字入り 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで
意味・現代語訳 わからないようにしていたのに、表情に出てしまっていたのだろうか、自分の想いは。「恋のことで悩んでいるのですか?」と尋ねられてしまうほどに。
歌い手 平兼盛(たいらのかねもり)

の二つの和歌です。

歌われたのは、天徳4年3月30日(西暦960年4月28日)の天徳内裏歌合。

村上天皇主催の歌合せで、内裏の清涼殿で行われたのだとか。

二十番勝負の最後、「恋」をテーマとして歌われたのが上記の2つ。

優劣をつけがたく、審判(判者)の左大臣・藤原実頼は迷います。

補佐役の大納言・源高明も何も言いません。

引き分けにしようかと思っていたところ・・・村上天皇が小さな声で「しのぶれど」と口ずさんでいたという情報が。

そのことを受け、藤原実頼は「しのぶれど」の歌を勝ちに判定。

この結果に落ち込んだ壬生忠見は、食欲がなくなりそのまま亡くなってしまった、なんて話も残っているみたいです。
(「沙石集」等)
が、それはどうやら「作り話である」という見方が一般的のよう。

「こいすちょう」と「しのぶれど」の感想

両歌ともに「恋する気持ちは、隠そうとしても、滲み出てしまうものである」というのをうまく表現しているのではないかと。

内容的には似ています。

自分は、「しのぶれど」は字余りになってしまうこともあり、音感では「こいすてふ」のほうが好きです。

ただ、「しのぶれど」のほうが、より思い悩んでいる(苦しんでいる)心情が伝わってくる印象も。

歌なので解釈には幅があるかと思いますけれども。

もしかしたら、村上天皇はそういった点を”よし”とされたのかもしれないですね。